東京地方裁判所 平成9年(特わ)2466号
一
被告人
本店の所在地
東京都墨田区錦糸一丁目一番五号
株式会社アサバ
右代表者代表取締役
入江泰三
本籍
東京都文京区向丘一丁目一八番
住居
東京都墨田区錦糸一丁目一番五号
会社役員
浅場啓介
昭和一一年三月一五日生
二
出席検察官 村上満男
三
弁護人(私選) 鈴木薫
鈴木茂生
主文
被告人株式会社アサバを罰金四三〇〇万円に処する。
被告人浅場啓介を懲役一年六か月に処する。
被告人浅場啓介に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
【犯罪事実】
被告人株式会社アサバ(以下被告会社という)は、平成七年一一月一八日以前は東京都文京区向丘一丁目一八番三号(同月一九日以降は東京都墨田区錦糸一丁目一番五号)に本店を置いて、鉄骨、橋梁等の建設工事及び解体工事等を目的とする資本金四八〇〇万円(平成六年五月一七日以前は一二〇〇万円)の株式会社であり、被告人浅場啓介(以下被告人という)は、平成九年六月二五日以前、被告会社の代表取締役として、被告会社の業務全般を統括していたものである。
被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと考え、架空の外注費を計上するなどして、所得を秘匿した上、次のとおり法人税を免れた。
第一 被告人は、平成三年七月一日から平成四年六月三〇日までの事業年度において、被告会社の所得金額が一億二三二二万二〇五五円(別紙1の修正損益計算書及び修正製造原価報告書参照)であったにもかかわらず、同年八月二五日、東京都文京区本郷四丁目一五番一一号本郷税務署において、本郷税務署長に対して、その所得金額が五七四三万一九五一円であり、これに対する法人税額が二〇六九万八二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成九年押第二〇六三号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、不正の行為により、被告会社の前記事業年度における正規の法人税額四五三六万九八〇〇円と申告税額との差額二四六七万一六〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れた。
第二 被告人は、平成四年七月一日から平成五年六月三〇日までの事業年度において、被告会社の所得金額が四億〇一四六万六一九五円(別紙2の修正損益計算書及び修正製造原価報告書参照)であったにもかかわらず、同年八月三〇日、前記本郷税務署において、本郷税務署長に対して、その所得金額が七八三一万六八四一円であり、これに対する法人税額が二八五二万二四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成九年押第二〇六三号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、不正の行為により、被告会社の前記事業年度における正規の法人税額一億四九七〇万三七〇〇円と申告税額との差額一億二一一八万一三〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れた。
第三 被告人は、平成五年七月一日から平成六年六月三〇日までの事業年度において、被告会社の所得金額が四四三九万九五九五円(別紙3の修正損益計算書及び修正製造原価報告書参照)であったにもかかわらず、同年九月三〇日まで延長された確定申告書の提出期限内である同年九月一四日、前記本郷税務署において、本郷税務署長に対して、その所得金額が二七八一万二六二五円であり、これに対する法人税額が九六〇万四五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成九年押第二〇六三号3)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、不正の行為により、被告会社の前記事業年度における正規の法人税額一五八二万四六〇〇円と申告税額との差額六二二万〇一〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れた。
【証拠】(括弧内の甲乙の番号は証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号を示す。)
全事実について
一 被告人の公判供述
一 被告人の検察官に対する供述調書
冒頭の事実について
一 履歴事項全部証明書
一 閉鎖登記簿謄本
第一、第二、第三の各事実について
一 村上茂樹、西秀信、嵯峨野進の検察官に対する各供述調書
一 給料手当調査書、賞与調査書、交際費調査書、雑費調査書、受取利息調査書、損金の額に算入した道府県民税利子割調査書、交際費等損金不算入額調査書、事業税認定損調査書
一 捜査報告書(五通、甲二、一二、一五、二〇、二一)
第一、第二の各事実について
一 吉田敏昭、工藤明人(甲二四)の検察官に対する各供述調書
第一の事実について
一 賃金給料(製造原価)調査書、賃借料(製造原価)調査書、保険料調査書、消耗品費調査書、有価証券売却損調査書
一 捜査報告書(甲三四)
一 法人税確定申告書控一袋(平成九年押第二〇六三号の1)
第二、第三の各事実について
一 地代家賃調査書、有価証券売却益調査書
第二の事実について
一 法人税確定申告書控一袋(平成九年押第二〇六三号の2)
第三の事実について
一 寄附金の損金不算入額調査書
一 捜査報告書(甲三五)
一 法人税確定申告書控一袋(平成九年押第二〇六三号の3)
【法令の適用】(以下刑法は、平成七年法律第九一号附則二条一項本文により、同法による改正前のものを適用する。)
被告人の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に該当するところ、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、刑法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一年六か月に処し、刑法二五条一項を適用して、情状によりこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとし、さらに、被告人の判示各所為は、被告会社の業務に関して行われたものであるから、被告会社については、判示各所為についていずれも法人税法一六四条一項により法人税法一五九条一項の罰金刑に処せれるべきところ、各罪について情状により同条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、被告会社について刑法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、その金額の範囲内で被告会社を罰金四三〇〇万円に処することとする。
【量刑の事情】
本件は、鉄骨、橋梁等の建設工事及び解体工事等を目的とする被告会社の代表取締役であった被告人が、被告会社の所得について、架空の外注費等を経費として計上するなどして、三事業年度にわたり、合計一億五二〇七万三〇〇〇円の法人税を免れたという事案であり、脱税額は決して低額ではなく、正規の税額に対して脱税額が占める割合も、七〇パーセントを超えており、軽視できるものではない。
被告人が被告会社の業務に関して行った所得秘匿行為は、知人が経営する会社や知人に対する架空あるいは水増しの外注費を計上し、建設した従業員寮を賃借したかのように仮装して架空の賃借料を計上し、解体工事の際得た廃材を売却した利益を除外し、架空の給与、賞与等を計上するなどしたというものであり、被告人は、これらの行為によって得た簿外資金を複数の借名口座に留保するとともに、その資金を使って知人が経営する会社や知人名義で株式の取引を行い、二事業年度にわたって利益を得ている。このように、被告人の所得秘匿行為は、多岐にわたる巧妙なものであり、被告人は、一事業年度については、過少な所得金額に基づいて修正申告をして、ほ脱行為が発覚するのを防ごうとしている上、被告人が調査・捜査段階にした供述によっても、前記三事業年度の所得秘匿行為のすべてが解明されているとは言い難いところがある。これらの事情に照らすと、被告人の刑事責任は重いというほかない
他方において、被告会社は、免れていた法人税等について、修正申告を行い、その本税をすべて納付しており、起訴されている免れた法人税についての延滞税、加算税は、分納を余儀なくされるなど、本件が発覚したことによって、相応の経済的な制裁を受けている上、安全で誠意ある工事に対して取引先から感謝状を受けるなど、社会的に評価され、本件が発覚した後、経理処理について改善をはかっており、被告人は、本件について反省の態度を示している。このように被告人、被告会社にとって有利な事情もある。
そこで、これらの事情を総合して考慮し、被告会社を主文の罰金刑に処し、被告人を主文の懲役刑に処した上、被告人に対する懲役刑の執行を猶予することとした。
(裁判官 山口雅髙)
別紙 1(1)
修正損益計算書
自 平成3年7月1日
至 平成4年6月30日
株式会社アサバ
<省略>
別紙 1(2)
修正製造原価報告書
自 平成3年7月1日
至 平成4年6月30日
株式会社アサバ
<省略>
別紙 2(1)
修正損益計算書
自 平成4年7月1日
至 平成5年6月30日
株式会社アサバ
<省略>
別紙 2(2)
修正製造原価報告書
自 平成4年7月1日
至 平成5年6月30日
株式会社アサバ
<省略>
別紙 3(1)
修正損益計算書
自 平成5年7月1日
至 平成6年6月30日
株式会社アサバ
<省略>
別紙 3(2)
修正製造原価報告書
自 平成5年7月1日
至 平成6年6月30日
株式会社アサバ
<省略>
別紙 4
ほ脱税額計算書
自 平成3年7月1日
至 平成4年6月30日
株式会社アサバ
<省略>
自 平成4年7月1日
至 平成5年6月30日
株式会社アサバ
<省略>
自 平成5年7月1日
至 平成6年6月30日
株式会社アサバ
<省略>